まぁ、俺達はいつもラブラブだったわけで。

いちゃつきまくってた。

それが当然になってたわけで。

しかしある日、試練は突然やってきた―。

*俺×君+友達*

「おはよ、熊ちゃん」
「おはよ」

にこっと微笑んで、熊ちゃんは返してくれる。
俺はいつも通り、天てれの収録に向かって。
恋人、熊木翔こと熊ちゃんと挨拶して…。
ここまでは、いつも通りだった。
―んが。

「く〜まちゃんv」

明るく弾んだ声の主は、卓也だった。
卓也は俺をちらっと見ると、何も見ていないかの様に、熊ちゃんに飛びつく。
俺は頭に青筋ができた気がした。

「おはよ☆」
「おはよ、卓也」
「…おはよう、卓也」

一応、先輩だし。
とりあえず俺は卓也に挨拶をする。
しかし、その返答ときたら…。

「あ、はよ、山ちゃん」

約3秒。
卓也は早口でそれだけ言うと、そのまま熊ちゃんと話し出す。
俺はその時、初めて激しく殺意を覚えた…。
熊ちゃんは、少し俺に気をかけてくれていた。(さすがだっ!)
でも、卓也の態度は変わらない。

「卓…」

一発文句言ってやろう、と声を出した。
その時、がっと誰かに肩をつかまれた。

「ち、ちひろっ…?!」
「おはよう、熊ちゃんvvv」

そこには、にこにことお得意のスマイルで立っているちひろがいた。
周りにハートが飛び散っていて、男なら誰でも落ちると思われる。
…俺は例外として。

「お、おはよ…ちーちゃん…」

熊ちゃんはおどおどしながら返答する。
俺はというと、未だに肩を掴まれたままだ。

「ちょっ…ちひ…」
「山ちゃん、スタッフさん呼んでるよ。さっさと行けば?v」

―出た、パワーファイターオーラ。
語尾にハートがついてるわりには、どす黒いオーラが出ている。
っていうか、挨拶なしか?!

また一発言ってやろうと決心したが、どうやら呼ばれているのは本当らしく、
スタッフがこっちに手を振っていた。
俺はしかたなく、熊ちゃんに「また後で」と言って、スタッフのもとへ向かった。
―ちひろと卓也がにやりと笑ったのにも気がつかずに。

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「熊ちゃん、これ食べる?v」
「あー、食べるーv」
…蘭丸。

「くまちゃん、志穂なぁ、テストで100点とったで!v」
「へぇ、偉いなぁ☆」
…志穂。

「あー!志穂ずるい!!僕だってとったよ〜!」
「よしよし、八木っちも偉いよv」
…八木っち。

「これ、里穂が作ったんですーv食べてくださいvv」
「わー、うまそう♪サンキュー♪」
…里穂。

…なんですか、これは。
卓也とちひろの出来事を境に、他の戦士までもが、日に日に熊ちゃんに引っ付くようになった。
比例して、俺への態度が悪くなっていた。
別に悪口叩かれてる訳でもないし、仲間はずれにされてるって訳でもない。
なんていうか…。
「熊ちゃんとは近づけさせません」的態度をとられまくっている。

「熊ちゃ…」
「山ちゃ〜ん、これわかんないよ〜」
…七世。

「熊ち…」
「Hey!山ちゃ〜ん☆」
…ブライアン。

「熊…」
「はーい、どいてどいて〜」
…小百合。

「く…」
「スタッフ呼んでたよ」
…ローちゃん。

ここ最近、まともに熊ちゃんと喋ってない。
と、言うか、喋る機会を明らかに減らされてる。
そう言う意味で、“悪い態度”なわけだ。

「はぁ〜…」

最近は、いつもこうだ。
俺は休憩時間、一人で外にため息をつきに行く。
誰といても楽しくないし、何より熊ちゃんと喋れない。
まだ一人の方がマシだ。

「…どれくらい…一緒に帰ってないのかな…」

風でなびく自分の髪を、片手で抑えながら空を見上げる。
休憩時間も、収録後も、彼と話す時間を与えられず。
帰りも蘭丸達が「送るよ」と颯爽と連れ帰る。
熊ちゃんは優しいから、嫌なんて言えない。
…そんなこと、わかってる。
わかってるさ…。

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「はい、熊ちゃん」
「ん、ありがと」

蘭丸が、紙コップを二つ持ってきて、片方を渡してくれた。
俺は微笑みながらコップを受け取った。
…きっと、心の底からは笑えてない。

本当は、寂しくて仕方ないから。

あの人は今、何処でどういった風に休憩してるんだろ…。

あの人は最近、誰と帰ってるんだろ…。

あの人は、俺と関われなくてどう思ってるんだろ…。

「…ん…熊ちゃん?」

蘭丸の声に気付き、はっと顔を上げた。
気付かないうちに、ずっと考え込んでいたみたいだ。

「何?」
「…俺、熊ちゃんのこと好きなんだ」

…は?
真剣に俺の瞳を見つめてくる蘭丸。
暫くの間、状況が飲み込めなかった。

「えっと…ごめん、どういう…?」
「だから、好き。愛してる。そういう意味。」

かっと顔が赤くなるのを感じた。
普段のへたれの蘭丸からは想像できないような真剣さ。
じりじりと迫ってくる蘭丸に、ついに俺は壁際に追い込まれた。

「ちょっ…!や、やめろって…!」
「熊ちゃん…」

―キスされるっっ!
俺は怖くなってぎゅっと目を閉じた。
―その時。

「くおらぁっ!!へたれ2号!!」

驚いて、俺と蘭丸は声の方へ視線を向けた。
聞き覚えのあるハスキーボイス。
茶色がかかった髪をなびかせながら、『あの人』がこっちへ向かってきた。

「や、やまちゃんっ…?!」

予想通り、それは山ちゃんだった。
いつものクールさからは想像できないほど、熱くなっていた。
皆も目を見開いている。
山ちゃんは俺と蘭丸のもとへたどり着くと、蘭丸に一発蹴りを入れる。
蘭丸は声にならない叫びをあげて、その場に蹲った。
そして山ちゃんはいきなり俺を抱き寄せた。

「もうすぐ休憩終わりと思って来てみれば…。何やってんだ!」

はぁはぁと息を荒らくしながら、ものすごい剣幕で蘭丸を睨む。

「…って、いうか、ここ外から入ったら全然見えないよ…」

山ちゃんの腕の中で、俺は率直に疑問を述べる。
そうだよ、近くにいた小百合達でも気付かなかったのに…。

「…そこんとこは、うん、気にしない。」

一人で頷いて、納得する山ちゃん。
おいおい、答えになってない…。
すると突然、山ちゃんは周りを見渡して、叫んだ。

「つーか!!
皆俺が抗議しないからって好き勝手してんじゃねぇ!!
いいか!熊ちゃんは俺の恋人なの!
引き剥がそうとしたって俺は地の果てまでついて行く予定なんだからなっ!
熊ちゃんは俺のなんだーーーっ!!!


地の果てまでとか怖っ…。
でも、なんか嬉しいかも…。
…と、ちょっと乙女チックに頬を染めて思ってたんだけど。
気がつけば山ちゃんの腕には更に力がこもっていて、スタッフが驚いてこっちを見ていて…。
俺は別の意味で頬を染めた。

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「ふぅーっ、寒みぃっ!」

白い息を吐きながら、熊ちゃんは肩を縮める。
そんな仕草が、可愛くて仕方ない。
俺が叫んだ後、すぐに収録が始まった。
終わったときに、颯爽と俺が熊ちゃんをさらってきて、そして今に至る。

「そうだね」
「…山ちゃん、全然違うね」

熊ちゃんはじっと俺を見上げた。
“違う”?どういう事だ??

「さっきはすっごい剣幕だったのに。今はその面影もないよ。」

ほんとに同一人物?とくすくす笑う。
俺は豆鉄砲をくらったような気がした。
確かに、全然違うかも…。

「…きっと熊ちゃんが関係したからだよ」
「へっ?」

俺は深く考えることなく、ぱっと答えた。
熊ちゃんは反応してからすぐ、ばか、と呟いて顔を伏せた。
俺は自然に笑みが零れた。
すっと熊ちゃんの髪を撫でると、熊ちゃんは伏せていた顔を上げた。
そして、目をすっと閉じる。

(…お、これは…。)

初チューですか?と、自分の顔がにやけるのがわかった。
長いまつげに、白い肌、ほんのりピンク色の頬と唇。
俺は迷う事なく、そっと口付けた。

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「おはよーございまーっす♪」

今日は熊ちゃんと二人でNHKへ来た。
すると…。

「おはよーv熊ちゃん♪」

ちひろがこっちへ向かってきて、熊ちゃんだけに挨拶する。
俺はカチンときて、熊ちゃんにくっつこうとしているちひろを引き剥がした。

「おはようございます、ちひろさん?」
「おはようございます、山元さんvどいてv」
「つぅかよ、昨日俺が何叫んだか、覚えてる?v」
「うん、勿論v熊ちゃんは山ちゃんのなんでしょ?v」

なんだ、わかってんじゃん。
さすがヤマチーズのチームワークだな。
そう思った瞬間、俺は酷い激痛に襲われた。
ちひろに、腹を蹴られていた。

「で・もv私たち、認めた覚えはないよんv」

人差し指を立てて、ウインクする。
はぁ?と震えながら、腹を抑えて俺はちひろを見上げた。
周りを見渡すと、どうやら皆もそうらしい。
卓也はそうだー!と声を上げているし、隣では、懲りていない様子の蘭丸もいる。
小百合はその隣でうんうんと腕を組んで頷いている。

「ま、そーいうコトv行こっ、熊ちゃんvv」
「へぁ?!」

熊ちゃんは間抜けな声を出した後、ずりずりとちひろに連れて行かれた。
本人は状況を飲み込めていない。
俺もぽかんと口を開けてその様子を見つめる。

「…!ちひろー!拉致してんじゃねーっ!!!」

どうやらまだ、試練は終わらないようです…。