それなりに。
僕は貴方が心配で。
僕は貴方が好きみたいです。
「お疲れ様でした〜」
スタジオ内にその声が響く。
今日の撮影はこれで終わり。
皆帰ろうとしている頃だった。
「公輝っ♪」
今日の撮りで一緒で、一番仲がいい、卓也が話しかけてきた。
卓也の顔色はいつも明るい。
顔色を伺う事もないし、何があっても丸く治める奴だから、気を使う事もなく、楽なやつだった。
「どうしたの、卓也」
「いやーね、この後なんか予定ある?」
まるで犬のように、ねぇねぇとしつこく聞いてくる。
俺は少し戸惑いながらも、やれやれと答えてやる。
「あのねー、もう夜だよ?こんな時間に出歩いちゃいけません」
「えー!なんでだよー!!」
「…君は年下を少しでもよい子にしようと思わないの?」
「うん。」
スラリと交わされて、俺はため息をつく。
前言撤回、卓也は楽なやつではない。
「だーめ。俺は帰って勉強するの」
「はぁ?!勉強とか馬鹿かよお前!!」
卓也は「よい子にはついていけましぇーん」といって、俺をからかった。
卓也の冷やかしには慣れているので、さほど相手にはしない。
「もー、卓也、公輝に迷惑かけちゃだめでしょ!」
そこに、高い声が聞こえた。
俺の胸は、その声によって高鳴った。
「里穂〜…」
案の定、それは里穂だった。
「ごめんねー、公輝、ちゃんと鎖つけとくから…」
「はぁ?!黒いぞ里穂!!」
「いいの!!卓也なんだから!!」
「理由になってねぇよ!!!!」
―ずきん
卓也と里穂は、夫婦漫才を繰り広げていた。
そんな二人を見ていると、胸の痛みが増してくる。
―がたんっ
「?公輝?」
「…俺、帰るから…。」
俺は鞄を持って、逃げるように去っていった。
二人を見るのが辛かったから。
好きだった女と男がいちゃついてるのなんて、見たくなかったから。
俺は里穂が好きだった。
一緒に仕事するようになって、だんだんと好きになっていた。
「若夫婦」って言われたりして、すっげぇ嬉しかった。
―でも、里穂はそう思ってなかった。
あの後、皆にあわせてニコニコ笑っていたけど、俺は見たんだ。
―少し、悲しげだった彼女の表情を。
―その視線の先には、卓也がいた事を。
あぁ、失恋だって思った。
もう終わったのかって確信した。
その数日後、卓也と里穂は付き合い始めた。
失恋だって分かった後も、二人を見ると胸の痛みが止まらない。
「…はやく…忘れさせてくれよ…」
すっかり空は暗くなり、ぼんやりと月の光だけが差し込んでいた。
―そんな時だった。
「あ…れ…?」
俺は見てはいけないものを見てしまったようだった。
「ちー…ちゃん…?」
そこには、
40代くらいの男と、
同じてれび戦士の、
村田ちひろがいた―。
彼女は、いつもと変わらぬ笑顔で男と話している。
男はどこかで見た事ある奴なんだけど…。
二人が出てきたのは、“ホテル”。
俺はふと、最近七世達がしていた会話を思い出した。
そのとき、休憩室から声がして、誰かと思って俺は覗き込んだ。
そこには、七世、美咲、小百合がいた。
(何話してんだろ…)
何か興味が沸いて、覗き込んでみた。
「ねぇ、知ってる?ちーちゃんって、援交してるらしいよ…」
「マジ?!やばくない…?でもちーちゃんがそんな事する〜?
あの子まだ小6だよ?」
俺は七世の言葉に心臓が止まったかと思ったけど、後から小百合の否定に同意した。
そうだよな、ちーちゃんがそんなことするはずないし…。
俺と同い年だもんな。
そうそうと、一人で納得していると、美咲が言い放った。
「それマジだよ。私見たもん。ちーちゃんとおじさんがホテルから出てくるの。」
「うっそ?!お父さんとかじゃないの?!」
「違うよ。私あの人知ってるもん。ってか、皆知ってるよ。」
「え、誰誰??」
七世が美咲を興味深々に覗き込む。
小百合はまだ信じられない、と言う顔をしている。
「社長さんだよ、NHKの。あれは間違いなくそうだった。」
美咲の言葉に、俺は脱力した。
ちーちゃんが、そんな事してたなんて…。
七世はへぇ〜、と、少しだけ驚いていた。
「…そういえば…。
なんかちーちゃん、『私も出番ほしいよ〜』とか言ってた気がする…」
小百合は愕然としながら、そう言った。
七世は、「そしたらつじつまがあうじゃん!」と言っていた。
「じゃ、噂じゃなくて事実なんだ。」
七世の言葉に、俺はその場から動けなくなった。
(…そうだ!あの人社長だ!!)
そのときの会話から、社長が出てきていたのを思い出し、確信した。
そうだ、社長だ。
(ってことは…。
まさにこれはその現場?!)
動けないでいると、二人は分かれた。
ちーちゃんはこっちに向かってくる。
彼女は俺に気付かずに、さっと横を通り過ぎた。
「ち、ちーちゃん!!!」
とっさに、俺は叫んでしまった。
ちーちゃんは、はっと振り返ると、やっと俺の存在に気付いた。
「ご…うき…?」
ちーちゃんは愕然と俺を見ていた。
俺達は公園にいた。
昼間と違って、ひとっ子一人いない夜の公園は、とても静かだった。
「あ…あのさ…ちーちゃん…」
「社長さんだよ、あの人。」
俺の言葉をさえぎるように、ちーちゃんはすらりと答えた。
口が開いて塞がらない自分と、何事もなかったかのように普通にいるちーちゃん。
只一つ、彼女がいつもと違う所。
それは得意の笑顔が消えている事だ。
「…別に、出番がほしいとかじゃないの。」
その言葉に、俺は意識を取り戻した。
そんな俺を放って、ちーちゃんは話を続けた。
「私、ずっと好きな人がいたの。熊ちゃん…知ってる?熊木翔君。
熊ちゃんが卒業するって聞いて、信じられなくて…。
即効で社長さんの所に行ったの。
そしたら、『君が私に抱かれたら、彼を呼び戻すよう交渉するよ』って言われて…。
最初は信じられなかったけど、私、熊ちゃんのためにならって思って。
今年に入った頃から、ずっとこうして会うようになってた。
こんなの駄目な事だってわかってるけど…。
でも、私は熊ちゃんに会いたいの…」
“熊木翔”と聞いて、俺は山さんの言葉を思い出した。
『いるよ、好きな子。すっげぇ大事なんだ…。熊木翔って名前。』
山さんは男だけど、と付け足して、へへっと笑った。
確か山さんと熊木さんって…。
「ち…」
「言わないで。知ってる。山ちゃんと熊ちゃんが付き合ってること。」
ちーちゃんは、只真っ直ぐに前を見ていた。
その横顔が、何処か悲しげで…。
少しの間、その顔に見とれてる自分がいた。
「それでも…戻ってきてほしいから…」
そっと、ちーちゃんは微笑んだ。
ちーちゃんは、ちっとも汚れてなんかいなかった。
その証拠に、彼女の微笑みは、誰の笑顔よりも綺麗だった。
「…!ちょ、公輝…?」
俺は知らず知らずのうちに、ちーちゃんを抱きしめていた。
同時に、頬を何かが伝っていた。
「…もう、辛くないから…」
俺の言葉に、ちーちゃんはふっと泣き始めた―。
あの日以来、ちーちゃんが社長に抱かれる事はなかった。
彼女から、もうやめたいと申し出たようだ。
それからは、あの噂…(本当だったけど)は消えた。
小百合や七世、美咲も普通に接していた。
変わった事はもう一つあった。
それは…。
「公輝?どうしたの??」
「里穂」
里穂を見ても、胸が痛むことはなくなった。
ただ、新しい悩みが出てきたと言うか…。
「公輝〜!」
「…はいはい!!」
「ちーちゃん…??…
あ、ごめん、もしや邪魔した??」
「いいよ。邪魔じゃないし…」
「頑張ってね、公輝♪」
里穂はぽんっと俺の背中を叩くと、卓也の方へ向かった。
俺は、呼ばれた方に足を運んだ。
そこには、
新しい悩みの種がいた。
それなりに。
僕は貴方が心配で。
僕は貴方が好きみたいです。
意味不明っ!!
結局公→ちー→熊風味ですね;;ギャァ(/\;;)
個人的に公ちーは好きですvvv
マイナー〜♪(何)