葉巻(シガー)やパイプ(刻みタバコ)も危険です


● 葉巻パイプも心血管疾患、COPD、上部消化管、肺癌のリスクを高めることが明らかになっています。

1999年の国際癌研究所(IARC)のデータでは葉巻喫煙者は非喫煙者よりも肺癌の発生率が9倍高く、パイプでふかす刻みタバコ喫煙者も8倍(ドイツ、イタリー、スウェーデンなどにあるIARCの7つの研究所で5621例の肺癌患者と7255例の肺癌のない人を対象に調査)。
1999年のアメリカのデータでは、葉巻喫煙者は非喫煙者に比べて相対危険度が、心血管疾患に対して1.27、COPDに対して1.45、上部消化管癌に対して2.02、肺癌に対して2.14(17,774人の男性30-85歳の追跡調査(1971-1995))。

参考文献
Boffetta P, Pershagen G, Jockel KH, et al.: Cigar and pipe smoking and lung cancer risk: a multicenter study from Europe. Journal of the National Cancer Institute 91(8): 697-701, 1999.

Iribarren C, Tekawa IS, Sidney S, et al.: Effect of cigar smoking on the risk of cardiovascular disease, chronic obstructive pulmonary disease, and cancer in men. New England Journal of Medicine 340(23): 1773-1780, 1999.


● 葉巻とパイプが関係する癌には、口腔癌、中咽頭癌、下咽頭癌、喉頭癌、食道癌、肺癌、膵臓癌、胃癌、膀胱癌があります

http://monographs.iarc.fr/ENG/Monographs/vol83/volume83.pdf
TOBACCO SMOKING AND TOBACCO SMOKE (Group 1)
5. Summary of Data Reported and Evaluation

葉巻とパイプ

葉巻とパイプは口腔、中咽頭、下咽頭、喉頭、および食道癌と強い関係があります。危険の大きさは紙巻タバコに似ている。
これらの危険は葉巻とパイプの使用量に応じて増加する。アルコールや紙巻タバコと併用するとさらに危険が増加する。
葉巻やパイプと肺癌の間には因果関係がある。葉巻やパイプ喫煙はまた、膵臓癌、胃癌、膀胱癌との間にも因果関係があるという証拠がある。

(切明義孝氏訳)


● 葉巻の方が紙巻タバコよりも胃癌による死亡率が高いという報告もあります

http://www.reutershealth.com/archive/2002/10/08/eline/links/20021008elin020.html
Many stomach cancer cases caused by tobacco use
Last Updated: 2002-10-08 17:00:54 -0400 (Reuters Health)
NEW YORK (Reuters Health)
米国の大規模な調査により、紙巻タバコ及びその他のタバコ製品の使用は男女ともに胃癌で死亡する危険を著しく増加させることが明らかになりました。胃癌は世界で2番目に多い癌で、潰瘍の原因となるHelicobacter pyloriの慢性感染と関係があることが知られています。
American Cancer Society in Atlanta, GeorgiaのDr. Ann Chaoさんは今年の6月に実施されたタバコの有害性の評価によると、IARCはタバコが人間の胃癌の原因になるという十分な証拠があると結論しました。
Chaoさんらの発見は International Journal of Cancer10月1日号に掲載され、タバコが胃癌の原因であると言う結論を裏付けました。
Chaoさんのグループは、Cancer Prevention II Studyに登録された情報を利用して、女性の紙巻タバコ使用と胃癌死亡率の関係、男性の紙巻タバコ、葉巻、パイプタバコ、無煙タバコ使用と胃癌死亡率の関係を調査しました。
男性467,788人のうち胃癌による死亡は996人で、女性588,053人のうち胃癌による死亡は509人でした。

胃癌死亡率を非喫煙者と比較すると、男性の紙巻タバコ使用者の胃癌死亡率は非喫煙者より2倍以上高く、女性喫煙者では胃癌で死亡する危険が49%高くなりました。葉巻を使用する男性は、非喫煙者と比べ、胃癌で死亡する危険が2.3倍高くなりました。
慢性の消化不良または胃潰瘍のある紙巻タバコ使用者は胃癌で死亡する危険が、非喫煙者と比べ、3倍以上になりました。
同様に、葉巻を使用する者では胃癌で死亡する危険が、非喫煙者と比べ、9倍以上になりました。米国人男性の胃癌死亡の28%はタバコが原因であり、女性の胃癌死亡の14%はタバコが原因たと推定しました。
「これらの結果は、我が国では他国に比べ胃癌が少ないけれども、喫煙率が増加している国々では胃癌も増加しており国家の大きな問題となっていることに合致する。」とChaoさんは語りました。
(切明義孝氏訳)
SOURCE: International Journal of Cancer 2002;101:380-389.


● 葉巻の方が紙巻タバコより発がん性が高い理由

(新版喫煙と健康(いわゆるタバコ白書第3版。2002年6月発行、保健同人社)p.44より要約)
タバコ煙の発癌物質
発がん性が確認されている様々のニトロソアミン類のうち、葉タバコあるいはタバコ煙にのみ存在しているものをタバコ特異的ニトロソアミン(tobacco-specific N-nitrosamine, TSNA)と呼び、その発生量を比較すると副流煙のほうが主流煙より多くのTSNAを発生している。これら以外に発癌物質として多環族化合物があり、この多環族化合物はシガレット(紙巻タバコ)のタールよりシガー(葉巻)のタールに多く含まれており、シガー(葉巻)の方が発がん性が高いといわれるのはこの理由による。


● 葉巻にも依存性があります

米国公衆衛生局長の公式見解
「タバコや葉巻には依存性があります。依存性の機序は薬理学的にも行動学的にもヘロインやコカインなどの麻薬と同じです。」(1988)


● 葉巻も安全ではない (切明義孝氏訳)

http://www.reutershealth.com/archive/2004/05/10/eline/links/20040510elin011.html
Study finds more evidence cigars not a safe smoke
Last Updated: 2004-05-10 10:09:15 -0400 (Reuters Health)
NEW YORK (Reuters Health)
小規模の研究により葉巻を1本吸えば体内の大動脈が数時間にわたって硬くなることが示されました。葉巻が、心血管疾患の危険を増加させる紙巻タバコより安全であるとは決して言えないことを発見したと研究者は語りました。
紙巻タバコと葉巻を吸う12人の健康な男性を対象とした研究により、葉巻を吸うと短時間のうちに、心臓から全身に血液を運ぶ主動脈である大動脈が非常に硬くなるという証拠が示されました。大動脈の硬さの程度は心臓の主心室の働きと血流のために重要な役割を担っています。葉巻を吸うと即座に大動脈が硬くなるという証拠を初めて発見したと研究を率いたAthens Medical School in Greece のDr. Charalambos Vlachopoulosさんは語りました。彼らはこの発見をAmerican Journal of Hypertensionに報告しました。タバコには様々な形がありますが、どの形のタバコを使用しても健康に対する深刻な危険があることは以前から知られています。しかしながら葉巻は安全な喫煙方法として1990年代から人気が高まってきています。しかし研究者は、葉巻が心疾患、脳卒中そして肺がんと口腔癌を含む複数の癌の危険を上昇させることを示しました。新しい研究で、研究者はpulse wave velocityと呼ばれる方法を利用し、男性喫煙者12人を対象に、喫煙後および点火していない葉巻をくわえた状態の後2時間の大動脈の硬さを測定しました。葉巻を吸うと男性の大動脈は即座に硬くなり、硬くなった状態は2時間の実験中持続したとVlachopoulosさんらは述べました。葉巻によるこれらの迅速な影響が長期的にどのような影響を及ぼすかは不明であると研究者は述べていますが、長年にわたり毎日何時間も動脈が硬くなれば“理論的に”心臓と血管の機能が障害されると付け加えました。この研究は「葉巻が心臓血管疾患の危険を増加させる更なる証拠を提供し、葉巻が紙巻タバコの安全な代替品になるという宣伝された認識に反撃するものである」と結論しました。
SOURCE: American Journal of Hypertension, April 2004.


● パイプ喫煙(水タバコなども含む)も葉巻と同様に危険 (切明義孝氏訳)

Pipe smoking carries high cancer risk - study
Last Updated: 2004-06-02 9:24:18 -0400 (Reuters Health)
WASHINGTON (Reuters)
パイプ喫煙者は、喫煙しない者と比べ、肺がんの危険が5倍高くなり、喉のがんの危険は約4倍高くなると米国癌学会の研究者は報告しました。
Journal of the National Cancer Instituteの論文で、疫学者Jane Henleyさんらはパイプ喫煙者の男性15000人を対象に研究を行ったと述べました。彼らは、パイプ喫煙者は、非喫煙者と比べ、食道がん、喉頭がん、大腸がん、そして膵臓がんの危険も高いことを発見しました。パイプ喫煙者はまた、非喫煙者と比べ、心臓病の危険が30%高まり、脳卒中の危険は27%高まり、慢性閉塞性肺疾患の危険は約3倍高くなります。パイプ喫煙の危険は、紙巻タバコ喫煙の危険と比べ、一般的に低いが、葉巻タバコ喫煙の危険に匹敵するとHenleyさんは語りました。有害なパイプ喫煙には水キセルや他のトレンディなパイプが含まれると研究者は語りました。「例えば、過去数年の間に水キセルがトレンディ、娯楽、紙巻タバコより害が少ない喫煙として販売されてきました。我々が発見した著しい危険から、全てのタバコ製品が病気と死をもたらすことに疑いの余地は無い」と語りました。


● パイプタバコは肺癌、咽頭癌、食道癌、大腸癌、前立腺癌、心疾患、脳卒中を引き起こす 2004/6/29 佐賀新聞記事

パイプたばこの愛好者は、非喫煙者と比べて肺がんによる死亡率は5倍、咽頭(いんとう)がんは4倍近く高い、という調査結果を、米国対がん協会(ACS)の疫学研究チームが発表した。
米国のパイプたばこ愛好者約1万5000人を対象に、がんやさまざまな疾患による死亡率を非喫煙者と比較し、米国立がん研究所雑誌に発表した。
パイプたばこの愛好者は食道、大腸、前立腺などのがんのほか、心臓疾患、脳卒中の死亡率も高かった。
研究チームは、パイプたばこの影響は紙巻きたばこよりは少ないが、葉巻とほぼ同じ、と指摘している。


参考:米国国立がん研究所報告書:モノグラフ9:葉巻(シガー):健康への影響と傾向
http://cancercontrol.cancer.gov/tcrb/monographs/9/index.html
主な内容
第1章 葉巻喫煙: 概要と最近の研究動向
消費動向/病気のリスク/吸引/ニコチン依存/成人使用実態/未成年使用実態/市場/環境タバコ煙/規制と課税
第2章 葉巻の消費と喫煙の傾向
第3章 化学と毒物学
葉巻の歴史/葉巻とは/葉巻の化学/主流煙の化学分析/副流煙の化学分析/葉巻煙の毒性と発がん性/タバコ煙の生体指標
第4章 葉巻喫煙と疾患
CPS-I Study/すべての死亡率/原因別死亡率/肺癌/口腔癌/喉頭癌/食道癌/膀胱尿路系癌/膵臓癌/心臓血管疾患/COPD(慢性閉塞性肺疾患)/脳血管疾患/大動脈瘤
第5章 葉巻煙による屋内空気汚染
環境葉巻煙濃度Cigar ETS Concentrations の数理モデル/機械による葉巻煙放出/人間による葉巻煙放出
第6章 葉巻の薬理学と乱用の可能性
依存効果の初期症状/葉巻のニコチン濃度/葉巻煙の吸入/ニコチン吸収の速度/ニコチン依存/ニコチン依存に影響を及ぼす要因
第7章 葉巻のマーケティングと販売促進
販売の方法/宣伝/販売促進/有効性
第8章 葉巻規制の方針
葉巻製造の規制/健康警告/葉巻や煙の成分の公開/広告制限/公共の場における葉巻喫煙の制限/訴訟/葉巻への若者のアクセス制限/課税


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