不妊治療でまず夫婦が禁煙すべき理由
・ 喫煙によって男性不妊や女性不妊になることがわかっています。
・ 喫煙者が外だけで吸っても、吐く息に含まれる有害物質が、タバコを吸わない家族にまで影響を及ぼすことが報告されています。
・ 不妊治療は多額の費用が発生しますが、禁煙は費用がいらないどころか、タバコ代が浮きます。また、禁煙だけで妊娠できない場合は浮いたタバコ代を不妊治療費にまわせます。
・ 禁煙により不妊治療の成功率が上がります
・ 妊娠した場合も、禁煙により、流産や先天奇形、乳幼児突然死などのリスクを回避できます。
・ 禁煙によりストレスが解消します。
(喫煙自体がストレスであり、禁煙がストレスのように感じるのは禁断症状が消えるまでの一時期のものです。今は禁煙治療により楽に禁煙が可能です。)
不妊治療で受動喫煙を避けるべき理由
・ 受動喫煙によって不妊や先天異常などがおこることがわかっています。
喫煙と女性不妊
イギリスの調査では、避妊を中止してから5年以上妊娠のない比率が、非喫煙女性では5.4%なのに対し、喫煙女性では10.7%(2.0倍)という結果でした。
アメリカの調査では、避妊を中止してから1年以上妊娠のない確率が、非喫煙女性に比べて喫煙女性は3.4倍になりました。
喫煙すると、卵管末端で卵子をとらえる能力が低下し、卵巣の排卵機能が低下し、体外受精の際にも喫煙女性から採取された卵は非喫煙女性から採取された卵より受精率が低く、さらに喫煙による子宮内膜血流低下から子宮性不妊症も発生し、着床しにくいことが報告されています。
妊産婦死亡率も喫煙と関係があり、1万人当たりの妊産婦死亡の発生率は妊娠に気づいて禁煙した喫煙者で1.47倍、喫煙継続者で2.30倍になります。
妊婦の喫煙と流産の関係については1日20本以上の喫煙によって流産リスクが1.7倍になるなどの報告があります。
また、胎児期に母親の喫煙に暴露された女性は、将来成人してからの不妊症発生率が高いという報告もあります。
喫煙と先天異常(奇形児)
喫煙は多くの先天異常と関係していますが、例えば、脳のない新生児が生まれる「無脳症」は妊婦の喫煙によって発生しやすくなり、発生率は喫煙量と相関します。イギリスの調査結果によると、非喫煙の場合1000出産当たり2.18人の「無脳症」発生リスクのところが、1日1〜9本の喫煙では2.77人(1.27倍)、10本以上では3.05人(1.40倍)と増加しています。
また、父親の喫煙も先天異常と関係があり、中国の調査によると、二分脊椎の発生リスクは、1日20本以上の父親の喫煙で3.2倍になります。
受動喫煙と不妊
卵子の染色体異常が、受動喫煙を受けていない非喫煙者では5.1%だったのに対し、受動喫煙にさらされている非喫煙女性は13.0%(2.5倍)と報告されています。卵子の染色体異常は不妊の原因となります。
流産は職場での受動喫煙によっても起こることが、複数の研究によって報告されています。スウェーデンでの調査によると、職場での受動喫煙暴露を受けた妊婦は、そうでない妊婦に比べて2.16倍流産を起こしやすいことが分かっています。アメリカの調査では、妊婦の1日1時間以上の受動喫煙によって流産が1.5倍に増えることが分かっています。
夫がたばこ吸う女性 体外受精に悪影響 (2005/6/6 読売新聞記事)
夫がたばこを吸う女性は、本人が吸わなくても、喫煙女性とほぼ同じ程度に体外受精の成功率が低いことが、カナダのマクマスター大などの研究で分かった。受動喫煙の体外受精への影響を初めて明らかにしたもので、英医学誌に発表された。
研究グループは、体外受精を行った女性225人を対象に、本人、夫の喫煙の有無と、受精卵の質や受精率、妊娠率などを比較した。
その結果、受精卵の質や受精率に大きな違いはなかった。
しかし、妊娠率では、夫婦とも非喫煙の場合に48%だったのに対し、喫煙女性は19%、夫だけが喫煙する女性は20%と、ともに半分以下に低下。子宮に戻した受精卵が、心拍が確認できるほど成長した割合も、夫婦とも非喫煙の場合の25%に対し、喫煙女性、夫が喫煙する女性はいずれも12%だった。
女性の平均年齢は33歳から34歳。たばこを吸う女性の1日の喫煙本数は平均11本、喫煙者の夫は平均10本だったが、本数による妊娠率の差はなかった。
研究グループは「たばこの煙が受精卵の成長に何らかの害を及ぼすのは明らか」と警告している。
喫煙と男性不妊
男性が喫煙すると精子の数が13〜17%ほど減少し、精子の運動性が低下し、頭がないなど異常な形をした精子の出現頻度が増え、男性不妊の原因になります。また、妊娠しても、子宮内で異常な胎児発育が起こり、流産や先天奇形などリスクが増加します。
夫の喫煙でも妊娠率半減 カナダの研究者が発表
体外で受精させた卵子を胎内に戻した妻が妊娠する確率は、妻本人や夫がたばこを吸っていると、夫婦そろって非喫煙者の場合の約半分に減ってしまう−−。こんな調査結果をカナダ・マクマスター大の研究者が、26日発行の欧州の医学誌「ヒューマン・リプロダクション」に発表した。
間接喫煙の害が胎児に及ぶという報告はあったが、妊娠のしやすさにまで関係することを示したのは初めてという。体外受精による妊娠ではなく、自然の妊娠でも同じ結果なのかどうかを含めさらに確認が必要だが、研究者は「妊娠したいなら、たばこのない環境での生活が賢明」と話している。(2005年5月26日ワシントン共同)
呼気による受動喫煙
喫煙者が同居家族に気づかって外だけでタバコを吸っていても、家族への悪影響は避けられないという報告が最近相次いでいます。これは例えば、喫煙したあと喫煙者の呼気には数時間にわたって一酸化炭素が検出されることからもわかるように、吐く息の中にタバコ由来の有害物質が含まれ、これを同居家族が吸わされることによると考えられています。禁煙以外に受動喫煙を防ぐ方法はありません。 詳しくはこちらをご覧下さい。