【玉葱の葉身の一考察】
 
 
 葉身を観察すると玉葱と話ができます。
ネギと違って葉身が凸凹になります。
凸凹の大きさや位置によって健康診断ができるのです。
大きな凹ボコの部分で葉は折れます。
葉の折れが多い玉葱は、病気に罹りやすくなります。
 
玉葱の一番急所はどこか。それは根盤部です。
(底盤部とも言う(根の出ているところ))
根盤部の弱りは病気がちの玉葱となるのです。
 
学者の研究によると、ネギに近い葉性が理想といわれています。根盤部を痛めない為に何が必要か。
葉に凸凹を作らない肥料設計が必要です。
 

 
 
愛知県総合農業試験場の勝又広太郎博士の研究では、
地球上の植物数は約27万種と言われていますが、その中で最も燐酸を必要とする植物は
玉葱だと指摘されています。それほど燐酸が必要な植物が玉葱です。

葉を切断し、三日月型になると病気がちで丸くなるほど健康です。
 
  
 
次に葉と根の関係を調べてみましょう。凸凹の多い玉葱は根が細く本数が少なく貧弱です。
 
土壌の性質によっても根の状態が違います。
 砂壌土では根数が多く、粘土質ほど根数確保が難しいのです。
 
その理由は何か。
 
粘土質ほど鉄分やアルミナが多く燐酸の効果を弱める働きが強いからなんです。
燐酸は人間で言えば不倫、つまり浮気しやすい性質です。
 鉄やアルミナとくっついて燐の働きを無効化します。
ですから肥料設計にはこれらの要素を十分認識して肥料設計する必要があるのです。
砂壌土では鉄やアルミナの含有率が少なく、従って燐酸施用量が少なくても効果が出やすく
燐酸施用量を少なくしても発根量が確保できます。
 
燐酸をよく効かせて1本1本の根が太く数も多くて、葉の折れない丸い葉を作ることが
秀品玉葱の必須条件です。
 
では理想的な施肥設計はどうすれば良いのでしょうか。
 
 一番は燐酸の研究です。
 
玉葱はなんと言っても燐酸抜きでは理想の玉葱にはならないのです。
 
私はこの道に入った頃約50年前燐酸肥料の比較試験を徹底的にやりました。
当時、過リン酸石灰を使う農家が多くいろいろ調べてみると太りは抜群に良いのですが、
根盤部が抜け落ちる腐敗が激発し、驚いたことがありました。
燐酸施用で気をつけなければならないことは燐酸を好む作物ナンバーワンの玉葱でも燐の過剰吸収は良くないのです。
過ぎたるは及ばざるがごとしです。
 
そこでいろいろ文献を調べて分かったことですが、リンとマグネシウムを同時に与えると
燐酸の過剰吸収が無くなることが分かりました。
私が自信を持って勧める蘇生輝1号・蘇生輝2号・セルホスには必ずマグネシウムが含まれており、
見事に燐酸が必要なだけ吸収される仕組みが生かされています。
これらの肥料を使うと絶対にしり腐れが起こりません。肥料と病気発生と深い関係にある良い例です。
 
私の指導先農家は、農協を始め多くの玉葱集荷業者に出荷していますが、
貯蔵力が強く品質が良いので一番遅く出荷しているとよく聞きます。
 

 
 50年以上前研修生としてお世話になった京都大学農学部研究農場との共同研究も
今年で7年目に入りました。
私の指導先農家を視察に来られた北島教授一行が基盤整備4年目の重粘土地帯で
10アール当たり8.4トンの収穫に驚きました。
 

 
1反7畝の圃場で分球・抽苔がゼロで玉葱の首部が1センチ8ミリより太いものが無いことが驚きの理由でした。
 収穫時になぜ首部の太さが1センチ8ミリにこだわるかというと、病気発生率と相関関係にあるからです。
又糖度の高い甘い玉葱は、貯蔵力が抜群に良いので消費者から好まれるのです。
 
 ある学者の研究によると玉葱の根は摂氏5度を境として伸び始め、伸びが停止することが分かっています。
水分補給で凍ったらどうしようと思う人が案外多いようですが、全く心配はありません。
 貯蔵玉葱は、2月下旬から3月の初めに掛けて花芽分化が起こります。
花芽分化とは花芽ができかかることです。
この頃太くて大きな姿のものほど花芽が出来やすいので、
特に水分不足で肥料が効きにくい年には花芽分化が起こりやすいのです。
 
 今日最も皆さんに知って頂きたい事柄を説明します。
 貯蔵玉葱で一番大切な技術は止め肥の時期を何時にするかです。
止め肥がなぜそんなに大切なのかと言えば、どんな玉葱に仕上げるかを決める重要な肥料だからなのです。
 
収量や品質に大きな影響があり、特に腐敗球の多少に直接影響が出るのです。
 日本の貯蔵玉葱栽培では、3月中旬以降の止め肥は絶対やっては駄目となっています。
私は50年この問題と取り組み、日本で初めて4月末まで可能な肥料を作ることに成功しました。
4月末に施しても腐らない玉葱が出来るんです。
堅くて重くて病気に強い玉葱作りが簡単にできる凄い技術に成功したのです。
 

 
京都大学農学部でも不思議だとそのメカニズム解明に取り組んでくれています。
 
その不思議な肥料が蘇生輝2号という肥料なのです。
 吸収されたチッソがものすごい勢いで消化されて糖分に替わって行く肥料です。
 さらに4月上旬に、43年前多木化学に作って頂いたセルホスを10アール当り2袋施用すると、
葉が直立型となり病気にめっぽう強く堅すぎるくらい堅い玉葱が出来、
しかも糖度が12度くらいまで高まります。
 
私は幸いなことに、若くして多木化学(株)に縁して作物と肥料の関係を追い求め、
日本では不可能とされた肥料を作ることに成功しました。
 
今年は皆さん是非このすばらしい肥料を使って見事な成績を収めて下さい。
特に今年は何十年ぶりかの寒い冬でしたので生育が遅れており
遅い追肥が必要な年になりそうですので是非試してみて下さい。
 
  下の写真は共に薬剤散布時の濃度障害による葉先の異変です。
 
 
 
濃度障害が酷いほど曲がりが大きくなります。余った薬剤の2度掛け、
特に高温時に起こりやすいので注意して下さい。
 
(2017.7.3)
 
 
 
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